贈りもののマナー

−正しい表書き,名前の書き方は?       
●黒墨の毛筆でていねいに書くのが正式       
  表書きとは,贈答品の表に「御祝」「粗品」などと記した文字のこと。「御銘菓」「御花料」などは相手に贈り物の内容を知らせるために,「御祝」「御礼」などは贈り主が直接口上を述べて手渡せないときに,贈る意味を知らせるために書きます。これは目録を省略したものなので,目録がある場合には表書きの必要はありません。
   表書きの位置は表面上部の中央に,水引やのしにかからないように記します。出産や結婚などただし書きを添えるなら,「御祝」の文字の右上にやや小さめに書きます。実際に書くときは黒墨の毛筆が正式。最近ではサインぺンやフェルトぺンなども使われますが,筆ペン以外はあまりお勧めできません。慶事ではめでたさを大きく表現するために色濃く,弔事では悲しみの涙で薄くなったという意味で薄墨を使うのがしきたり。現在ではとくに区別する必要はないようですが,気持ちを伝えるために贈るのですから,基本の気持ちは心得たいものです。
   また,文字は楷書でていねいに書くのが基本。筆や筆ペンの場合には,少し行書ぎみに書いてもきれいですが,自己流のくずし字とつづけ字はタブーです。
   贈り主の名前は,表書きの真下に姓名を書くのが正式。複数で贈る場合は右から左へ,目上の人から順に連らねます。この場合,表書きの真下に目上の人,以下は左へ連記し,決して右側へずれないように注意を。右側へずれてもいいのは,肩書きや所属,居住地を小さく書き添える場合のみです。人数が多いとき(四名以上)は代表者の名前を書き左に「他一同」「○○会有志一同」などとして金包の中に全員の名前を書いた紙を同封します。名前を書く代わりに名刺を貼るのはあくまで略式です。

−進呈目録のつくり方・書き方は?       
●正式な贈答品には必ず目録を添える       
   日本では,正式な贈答には必ず目録を付けます。目録には,贈る品名と個数,日付け,贈り主名と宛て名を書き,贈答の目的や意味を書き添えることもあります。
   目録は文房具店などでも目録用紙が売られていますが,奉書紙があれば簡単につくることができます。つくり方は奉書用紙を縦二つに折り,輪を下にして左右を三つ折にするだけ。これが目録となり,もう一枚の奉書紙か格式をもたせるなら檀紙で包めば出来上がりです。目録の包み方は,左,右,最後に上下を裏側に折ります。
   書き方は,右中央に「目録」,真ん中の部分には品名と個数,贈る日付けを左寄りに記します。左の部分には中央に宛て名を,右寄りに贈り主名を書くのが正式です。これは品物に添える目録の場合で,品物代わりに目録だけを手渡す場合には,違う書き方もあります。この場合は目録を品物に見立てるということで「目録」と書く位置は同じですが,真ん中の部分には品名と個数,場合によっては品物の内容などを記し,左の部分には贈る日付けのみを書きます。贈る目的や意味,贈り主名は上包みに表書きします。この目録には,水引とのしは必要です。
   贈り主が団体や多人数の場合は,団体名や代表者の姓名の脇に「他○名」と書き,中の目録に全員の姓名を連記します。このときは,宛て名も忘れず記入します。
   ちなみに,関東以北ではおもに結納品に添える目録に縦長の「縦目録」を使用しますが,一般に使う一 〜二品の進呈目録なら二つ折の「横目録」のほうが文字の納まりが良く使いやすいでしょう。

−現金を贈るときの包み方は?       
●折形を覚えれば突然の贈りものにも便利       
  現金だけでなく商品券やギフトカードなど贈る場合には,金包を使うのが通常です。金包の折り方は意外に簡単。覚えておけば,市販ののし袋に頼らずとも突然の場合に対応できるでしょう。
   もっとも簡単なのが「たとう」。手軽な折形だけに,贈りものにふさわしくていねいに,引き締まった折り方を心がけましょう。弔事用は白紙一枚で折りますが,慶事の中でも格式のある結婚祝いには檀紙を使い,左端の合わせ目に少し見えるように紅紙を重ねて折ると華やかになります。和服のおしゃれ衿と同じ要領で,左端の裏側に細く切った紅紙をあしらうだけでもかまいません。これに金銀七本の桐型か十本のあわじ結び,紅白の結び切りの水引をかければ,立派な結婚祝いの金包に。一般慶事用なら紅白蝶結び,弔事用なら黒白か黄白の結び切りの水引をかけます。このたとうは,大きな金包の中包みとしても使うことがあるので覚えておきましょう。
   現金やギフトカードなどを気軽に贈る場合には,祝儀金包の折り方で。表面左側上下の三角形が特徴なので,紙幣よりやや大きめの厚紙を使って別の紙で試し折りすればバランス良く金包をつくることができるでしょう。