贈りもののマナー   
−贈りものをするときの心得は?       
●ギフトは愛をかたちにする効果的な媒体       
  贈りものは,相手に伝えたい自分の気持ちを品物に託して届けることで,意思伝達をより効果的にし,コミュニケーションを良くするためのものです。「おめでとう」「ありがとう」「お元気で」「よろしく」といった気持ちを言葉で伝えるだけではなく,金品でより鮮明に相手の心にアピールする役割を持っています。贈りものを受け取るとうれしく感じて心が弾むのは,ただ自分の持ちものが増えるからではなく,贈り主の心遣いが豊かな気分にさせてくれるからではないでしょうか。       
  そして,また,贈りものは "愛をかたちに"するいちばん確かな方法といえるでしょう。相手に持っている愛情や,思いやりもかたちにしなければ,伝わりません。その媒体となるのがギフトです。そうした相手を思う気持ちがあれば,決して虚礼ではなく,相手の喜ぶ顔が浮かんでくるような贈りものがごく自然に選べるはず。すべての贈りものは,愛が根底にあるということを銘記すべきでしょう。そうすることによって人の心と心を結ぶ糸となり,心を伝え合い,人間関係をスムーズにする手段ともなります。贈りものは,伝えたい心があるからこそ贈るのだということを忘れないようにしたいものです。

−贈りものにはどんな種類が?       
●TPOをわきまえて贈りものを使い分ける       
  贈りものは,パターンとして三つあります。一つは個人から個人へ贈るパーソナルギフト。これは結婚祝いや誕生祝いのように個人の心に訴えるものです。欧米ではこのパーソナルギフトが中心ですが,日本では歴史が浅いためか,まだ定着しているとは言えません。したがって品選びや贈り方にもぎこちなさが感じられます。しかし,最近は若い世代の間で個性豊かなギフト習慣が浸透し始め,今後は新しい文化の一つとなりそうです。
   二つ目はお中元・お歳暮など年中行事にちなんで行われるシーズナルギフト。家族や家庭単位で交わされるこのシーズナルギフトが現在の日本の贈りものの主流です。それだけに形式化,マンネリ化の傾向が強く,今後は,この傾向を改めていくことが必要と言えるでしょう。     
  三つ目は企業などが顧客に配る粗品や景品などのソーシャルギフト。企業PRや賞品など不特定多数を対象にする反面,贈る側の目的が明確なのが特徴です。
  いずれにしろギフトには,いつ,何のために,誰に,どんな形で贈るのか,といったTPOがあります。こういったTPOを考慮したうえで,品選びや贈り方のスタイルを使い分けることが大切でしょう。

−品選びのポイントは?       
●品物の持つ特徴と届ける心をマッチさせる       
   上手な贈りものをするには,伝えたい心にふさわしい贈り方や時期を心得ることです。そのためには,祝う心,悔やむ心,感謝や激励,慰めなどの伝えたい心に適した贈りものを選ぶセンスが必要でしょう。受け手が贈り主の個性や気持ちを感じとれるような品物を選ぶことができれば,その贈りものはほぼ目的を果たしたことになるはず。品物自体が持つ特徴を見極め,先方との間柄にふさわしい品を贈る心遣いを大切にしましょう。       
  たとえばタオルや石鹸は「清潔」なイメージ。ちょっとした贈りものには適していますが,親愛の情を示したり,大きな喜びにはそっけない感じがして不向きと言えます。お茶やお菓子,嗜好品は「くつろぎ」や「やすらぎ」で,親密感やごぶさた伺いの感覚。また,ネックレスやネクタイは「愛しています」などという深い愛情を届けるときに適しています。それだけに相手の心の中に入り込むわけで,場合によっては失礼になることも。恋人や家族以外に贈るときには誤解や失礼のない品選びが必要です。
   個性的な品や趣味の強い品は,親しい間柄だからこそ贈れるもの。一般的には,親しみやすい品をもう少しさりげなく贈るのがマナーでありセンスと言えるでしょう。

−どんな贈りものが喜ばれるのか?タイミングは? 
●結婚祝いは事前に,出産祝いは落ち着いてから       
  贈りものは気持ちを伝えるものですから,一人よがりなものだとかえって相手の迷惑になり,気持ちが伝わりません。たとえば,小人数のお宅に傷みやすい生菓子などをたくさん贈るのは常識を疑われるかも。贈りものを選ぶときには相手の家族構成なども考慮に入れ,喜ばれるものを贈る工夫をしましょう。
  また,贈りものはタイミングが大切です。時期がずれるとせっかくの品選びの効果が薄くなってしまいます。相手の心に訴えるには,しきたりや決まりをわきまえ,贈る時期を考えることもセンスのうちでしょう。一般には「祝いごとの場合はその情報に接したらすぐ」というのがマナー。結婚祝いも当日持参するのではなく,事前に贈るのが正式です。ただし,出産祝いはすぐに届けると応対する産婦の負担になりますので,落ち着いてからにしたほうがいいでしょう。
   このほか,弔事に関しては当日が原則。かなり時期がずれたときにはその時期に合った品を贈ります。そして,何よりも相手への心遣いがいちばん大切ですから,それを心得ていればどのようにも対応する方法があるでしょう。