葬儀の後始末

−世話役からの事務の引き継きは?
●精進落としの直後に行う
   喪主は各世話役から,会計の帳簿,香典と会葬者名簿,領収書,請求書,弔電や弔辞など,すべての書類を引き継ぎます。また現金の立て替えがある場合は清算を行います。このとき世話役代表にも立ち会ってもらうとよいでしよう。   喪主や遺族は,世話になった人たちにていねいにお礼を述べることも忘れないようにします。
●親族と今後の法要についても打ち合わせを
   精進落としは親族が集まる良い機会ですので,法要についての打ち合わせを精進落としのあとにしておくとよいでしょう。
   初七日,二七日,三七日,三十五日や四十九日,百か日などの法要をすべて行うのか略すのかなどについて相談し,法要に招く範囲もこのときに決めておきます。

−僧侶,神官,神父への謝礼は,いつ,どのように?
●なるべく当日にすませる
   喪主が,葬儀後にあいさつとともにお礼を渡します。金額に規定があればそれに従います。なければ,檀家総代,氏子総代,信者の長老などに相談するのがよいでしょう。また葬儀社の情報も参考にします。
   一般的に葬儀の規模や格式,お世話になった度合いと人数や故人との日頃のつきあいなどをもとに,喪主の経済力を考慮して気持ちを表します。
   仏式の場合は,戒名のお礼も別に包みます。またキリスト教では,神父や牧師へのお礼のほかに,教会の使用料や聖歌隊,花などの実費,その他のお礼を別にします。
   包み方は,奉書紙に包むか白封筒に入れます。白黒の水引きの不祝儀袋は,先方に不幸があったわけではありませんから失礼にあたりますが,葬儀の折は一般に使われているようです。
   表書きは,仏式なら「御布施」,神式の場合は「御神饌料」「御榊料」,キリスト教式の場合は「御花料」「献金」「御ミサ料」とします。また「御礼」とすれば,どの宗派の場合にも非礼にはなりません。

−葬儀社への支払いはいつごろまでに?
●初七日くらいまでにすませる
   葬儀のあと二〜三日したら,明細書付きの請求書がきます。添付された明細書の内容と金額を確認して,指定された方法ですぐに支払いをすませます。遅くとも一週間以内にはすませたいものです。

−仕出し屋や酒屋への支払いは?
●支払いに心づけを添える
   現金払いを原則にしている仕出し屋や酒屋なども葬儀の場合は,支払いが後になることが多いものです。請求書を受け取ったら,すぐに支払いをすませましょう。
   また通夜や精進落としで,グラスや皿などを貸してくれることもあります。お世話になったときは,多少の心づけを支払いにプラスしたいものです。心づけは白い封筒に「御礼」「志」と表書きします。

−葬儀費用の領収書は必要?
●遺産相続の際の控除になるので保管する
   葬儀にかかった費用は,遺産相続のときに相続税の控除の対象となりますから,出納帳にはできるだけ正確に記入しておきます。出納帳と領収書類をまとめて保管しておくとよいでしょう。
   また寺院などへのお礼(お布施など)は,領収書が必要なことを伝えると発行してくれます。
   そのほかに,火葬場で受け取った「埋葬許可証」は,遺骨を墓地へ埋葬するときに必要な書類ですから,大切に保管しておきましょう。

−病院への支払いは,いつごろまでに?
●遅くとも葬儀の翌日には支払いをすませる
   遅くとも葬儀の翌日ぐらいまでに清算するのがマナーです。故人が,緊急入院や大手術などでとくにお世話になった場合は,主治医などに高級洋酒などを持参して謝意を伝えるとよいでしょう。また看護婦さんに世話をかけた場合は,ナースセンターに菓子折りを持参して礼を述べ,葬儀のすんだことを簡単に報告します。

−借りていたものは,いつ返却する?
●自治会などから借りたものはできるだけ早く
   テントやテーブルなど,自治会や町内会から借りたものはできるだけ早く返却します。また隣近所から借りた座布団や食器などは,数を確認してからお礼を添えてお返しします。
●レンタルのものは期間内に
   喪服などレンタルの場合は,契約期間内に返却します。借りた着物は,風通しのよいところに吊り,シミなどを調べておきます。帯やぞうりなども返却を忘れないようにします。

−世話役へのお礼,近隣へのあいさつは?
●あいさつ回りは葬儀の翌日か翌々日に
   葬儀で世話になった近所の家へのあいさつ回りは,葬儀の翌日か翌々日に行います。以前は,親戚の人が二人一組になって回りましたが,最近では遺族が直接に出向く傾向です。
   服装は,地味な平服,あるいはダークスーツでかまいません。お礼の品は忌明け後,香典返しか,それとは別にします。
●世話役は若い人には現金を。目上の人には品物を
   葬儀の際の世話役や手伝ってくださった人たちへのお礼は,精進落としでしているわけですが,もう少していねいに謝意を表したい場合もあるでしょう。若い人や酒屋などには「御礼」「薄謝」などの表書きで,現金を渡します。
   目上の世話役の人たちには,現金では先方も受け取りにくいでしょうから「御礼」の表書きで,品物を用意します。
   これらを固辞する人には,忌が明けてから,形見分けや記念品などというかたちで贈るようにするとよいでしょう。あるいはお礼の一席を設けます。

−故人の勤務先の上司へのあいさつは?
●初七日までにすませる
   あいさつ回りとしては,世話役代表や各世話役,近隣の人,寺社や教会,故人の勤務先や恩人,社会的に地位の高い人などが挙げられます。近隣の人や世話役代表,各世話役,寺社や教会などは,葬儀の翌日などにすませますが,故人の勤務先など少し離れたところへは初七日までに直接あいさつに出向くのがマナーです。
   かつては親族が二人で代理として行ったものですが,最近では,喪主,遺族が出向くようになっています。
   ただし喪主が高齢のときや未成年の場合は,代理人が喪主に代わって出向きます。服装は地味なスーツなどでよいでしょう。
   故人の上司へのあいさつでは,「葬儀中はとりこんでおり,ごあいさつもできずに失礼しました」などと,礼を逸したことにお詫びの言葉を述べます。

−弔電や供物をいただいた人へは?
●弔電や供物をいただいた人には礼状を出す
   会葬礼状は今日では通夜や葬儀の際に清めの塩や供養の品とともに手渡しています。しかし当日に弔問できないため弔電や供物などを送ってくださった人たちには,葬儀後,早めに礼状を郵送します。礼状を送る時期が年末年始と重なる場合は,松の内が過ぎてから届くようにします。
   礼状は,黒かグレーの枠に喪主,親族代表の名前を列記しますが,葬儀社にいくつかの見本がありますので,そのなかから選べばよく,会葬礼状を注文するときに依頼すればよいでしょう。
   また,葬儀の告知に新聞広告を利用した場合や規模の大きな葬儀を行った場合は,会葬御礼の広告も新聞を利用して行います。
●礼状の文例
謹啓 亡母○○儀,告別式に際しましては,ご丁重なご芳志
を賜りまして誠にありがとうございました。
   早速拝趨の上親しくご挨拶申し上げるべきところ,略儀な
がら書中をもって謹んで御礼申し上げます。
                                                                       敬具
平成 年 月 日
                                                        喪 主○○○○
                                                    親族代表○○○○