祭事のマナー
 
秋の休日とその意味
   法律によって制定された祝祭日には,すべて意味があります。意味を理解すれば,その日の過ごし方もおのずと見えてくるはずです。せっかくの休日ですから,自分なりに有意義な過ごし方を見つけたいものです。
●東京オリンピックを記念したスポーツ推進デー
「体育の日」 十月十日
   昭和三十九年,十月十日から全十五日間の日程で開催された東京オリンピックは,初の衛星放送によって世界各地に実況中継がなされたという画期的な大会として歴史上に名を残しています。体育の日は,この東京オリンピックを記念し,翌四十年にその開催日が祝祭日に制定されました。
   オリンピックの起源は,古代ギリシャにまでさかのぼります。そのころ,古代ギリシャの四大競技の一つにオリンピア祭りがありました。ギリシャでは戦死者の葬儀の際,その霊を慰めるために墓前で競技を行っていたと言
います。それが神に捧げる競技へと変化し,また宗教行事となって,さらに国民的な祝典へと移り変わっていった
ようです。ですから,オリンピックの起源は魂鎮めの行事だったといえるでしょう。
   現在では,四年に一度,夏季と冬季の二回にわけてオリンピックが開催されています。ですが,やはりスポーツは見るよりもするほうがたのしいはず。体育の日は,国民がスポーツを通じて健康で明るい生活を送ろうという趣旨です。ちょうどこの時期は気候も良く,スポーツをたのしむのには最適。全国各地の学校や職場で運動会などが催されることも多いので積極的に参加し,この日だけに限らず,自己管理のためにも自らスポーツをする意欲を持ちたいものです。
●主権在民を宣言した新憲法が公布された日
「文化の日」 十一月三日
   十一月三日は,第二次大戦前まで明治天皇の誕生日を祝い「明治節」という祝日に定められていました。それから時代を経て,戦争を放棄した日本は昭和二十一年のこの日,主権在民を宣言した新憲法を発布しました。これを記念して,明治節は「文化の日」という新しい祝日に生まれ変わったのです。
   この文化の日には毎年,文化勲章の授与式が行われています。ちなみに,五月三日の「憲法記念日」は新憲法が施行されたことを記念した祝祭日です。
●秋の収穫祭が生まれ変わった祝祭日
「勤労感謝の日」 十一月二十三日
   「勤労感謝の日」である十一月二十三日は,戦前は「新嘗祭」が行われていた日です。新嘗祭は天皇が祭祀者となって,太陽神である天照大神と稲の神である豊受大神にその年にとれた初穂を供える収穫感謝の祭儀。天皇が即位後初めての場合は「大嘗祭」,毎年行われるのは新嘗祭と呼ばれ,国家の休日と定められていました。
   その新嘗祭は,昭和ニ十三年に「国民の祝日に関する法律」が制定されて廃止となりましたが,現在でも皇室で祭儀は行われています。また,勤労感謝の日は「勤労をたっとび,生産を祝い,国民が互いに感謝する日」という意味で祝祭日に制定されたものです。

−正月事始めには,何をすればいいの?
●予定を立てて効率的にお正月の準備を
   十二月十三日は「正月事始め」と言って,古くからお正月の準備を始める日とされています。かつては,この日に門松に使う木を山から伐ってきたり,しめ縄をなったり,松迎えなどを行ったものでした。しかしながら,こういったお正月の飾りものも現在では店で売られていますから,この日にこだわる必要はなく,もっと暮れに押しせまってから準備にかかっても問題はありません。もちろん,できれば十二月に入ったころから買いものなど,計画を立て準備をするほうが効率的でしょう。
●大掃除は普段手の届かないところから
   スケジュール的には,十二月前半は普段手の届かないところなどを中心に計画を立てて掃除を行います。しきたりでは,まず,すす払いから始めます。
   すす払いは,もともと新しい年神を迎えるための宗教的な行事。竹竿の先にわらをくくりつけた「すす梵天」と呼ばれる道具をつくって払う風習などもありました。とくに,昔はほとんどの家屋にすすがつきやすい囲炉裏があったため,すす払いは正月事始めの最初に行う仕事として重要視されていたようです。いまでも社寺などではすす払いをして本尊などを清めますが,一般の家庭や会社では宗教的な意味合いは失われつつあります。ですから,あまり気にする必要はないでしょう。
●主婦まかせにせす家族全員が協力を
   十二月後半の暮れも近づいたころには,身近なところの掃除を。物置や庭などの家の外まわりから始めて,押
し入れや納戸,普段手をつけない戸棚の中の整理などを行います。また,天井や壁などの汚れ落とし,ガラス拭きなどの高い所の掃除は男性にまかせるといいでしよう。和風住宅なら,障子やふすまの張り替えも済ませておきたいもの。かつては,こういったことも男性の仕事とされていた地方があるようです。
   いずれにしろ,正月事始めの前後から少しずつ大掃除を始めていくのがお正月の準備の基本です。とはいえ,
主婦が一人ですることではありません。買いものにしろ掃除にしろ,新しい年を迎える準備は家族全員の仕事。
夫婦を中心に,子供たちにもそれぞれの能力に合わせてできる範囲で仕事を分担し,一つずつ片づけていくよう
にしましょう。
   なお,スケジュールを立てるポイントとしては,年末のゴミ収集日を念頭に置いて考えること。天候や来客など,不意の出来事でスケジュールがずれ込んでいくこともあるので,できるだけ余裕をもって予定を立てておくことが肝心です。