祭事のマナー

−年始客を迎えるマナーは?
●事前に日にちを決め家族全員で歓待を
   かつては,松の内には,どこの家庭でも年始客を迎える準備を整えておくのがマナーとされていました。しかしながら,現在では生活様式もリズムも変わってきたので,お正月のもてなしは親しい人や身内程度に限り,予告なしの年始客には玄関先であいさつを受けるだけでもかまいません。
   もてなしにあたっては事前に日にちを決め,その日は年始客を招く日とすることが多いようです。自宅でもてなすときは,家族全員で歓待するのがエチケット。客同士の面識がなくても,主人側が紹介して同席してもらえばいいでしょう。型どおりにお屠蘇を勧めるのもいいですが,あとは好みの飲みもので,おせち料理を中心に,少し時間が経ったら温かいものなどを相手と時間に合わせて出します。大皿などの盛り込み式にしておけば,人数が増えても融通が利くのではないでしょうか。主人側も落ち着いて接客できるよう,事前に箸や杯,小皿などを座敷に用意しておくのもコツの一つです。
   服装は礼装の必要はないとはいえ,和装なら紬や小紋程度に調えて,お正月らしく小ざっぱりしたものが適しているでしょう。

−お年玉を贈る範囲と金額は?
●学齢前なら品物,学生は一か月の小遣い額を目安に
   本来,お年玉は神に供えた丸餅を一家の長が家族や使用人,出入りの職人などに分け与えたものでした。現在では,それが現金になり,親から子へ贈る形が一般的になっています。
   もとの意味に沿って考えれば,一家の経済的支柱にある人が家族に与えるということになります。この範囲には,親から子や孫はもちろんですが,すでに現役を引退している老親などを含めてもいいでしょう。このほかには親類の甥や姪など,自分より若い人たちに贈るのが一般的です。他人の場合には,世話をしている人の子供に贈る程度,先輩や上司など目上の方の子供に贈るのはマナーに反します。
   金額は,子供の経済感覚に合わせて,だいたい一か月の小遣いの額が限度。学齢前の子供は,おもちゃや絵本などの品物のほうがふさわしいでしょう。暮れのうちにポチ袋を手づくりなどで用意しておき,一人ひとりの名前を記します。大切なのは,子供が金額で人を判断しないようにすることです。心をかけてくれた大人に感謝し,贈られたものをどう生かすかが問題。そのためにも,本人に使途を考えさせることが必要でしょう。

−七草・鏡開き・小正月・どんど焼き・骨正月は?
●五穀豊饒を祈って一目七日の朝には七草粥を
   正月の松の内が終わる一月七日の朝には,七草粥を食べる風習があります。古くは七草ではなく,米と麦,稗,粟,黍と五種類の穀物に,若菜二種類を混ぜたものを五穀豊饒を祈って食べていたようです。
   江戸時代に定着した春の七草は,せり,なずな,はこべ,ごぎょう,ほとけのざ,すずな,すずしろ。これらを炊き込んだお粥は万病を避けるといわれますが,寒い時期のビタミン補給と正月料理で疲れ気味の胃を休めるという古人の知恵が感じられます。とくに七草すべてを入れる必要もなく,ほうれん草や小松菜を代用したり,洋風や中華風に仕立てることもできますので,古人の知恵を生かしてしきたりを楽しくアレンジしてみては…。
●縁起ものの鏡開きは包丁を便わすに餅を割る
   年神に供えた餅を食べると一年中息災でいられるという言い伝えから,一月十五日には鏡開きを行います。餅を「切る」とか「割る」との不吉な言葉を避けて,「開く」といわれるように,鏡開きは包丁を使わず金槌や木槌,手で割るのがしきたり。小さくした餅は,おしるこやぜんざい,雑煮に入れて食べます。縁起ものなので,なるべく多くの人たちに行き渡るようにします。
●小正月は女性たちがいたわられる休息日
   一月十五日の小正月は,別名,女正月ともいわれ,お正月中忙しかった女性たちの休息日です。一般には小豆粥を炊いて,一家のまめ(健康)を祈願しました。現在,この日は成人の日にあたりますので,小豆粥の代わりに赤飯などを食卓に載せてもいいでしょう。
●正月飾りや門松はどんど焼きで燃やす
   松の内,飾った正月飾りを持ち寄って焼くのがどんど焼き(左義長)。だいたい,十四日の夕刻か十五日の夜に行われることが多いようです。
   年神を送るどんど焼きでは,この火で餅などを焼いて食べると邪気が祓われるという言い伝えがあり,子供たちの冬のたのしみの一つでした。ですが,とくに最近の都会地では実行するのが難しい行事。近くの神社などで行われる場合に持って行くか,きれいに束ねて袋に入れ,ゴミ回収車に任せるようにしましょう。
●正月行事のすべてを終えるのが骨正月
   正月行事の最終日である一月二十日の骨正月には,正月料理の残りをすべて食べてしまいます。この日でお正月の行事は終わりますが,その目的や意味を理解すると,たいへん合理的で興味深いものがあります。古い習慣やしきたりだと思わずに,その基本の精神や知恵をいまの暮らしに取り入れていきましょう。