祭事のマナー

−年賀状の書き方は?
●交友関係を改めて確認する年に一度の機会
   本来,年賀状は正月に直接年賀に伺えない遠方の方に送る年頭のあいさつ状。しかし最近では,正月に会うことがわかっている方にも年賀状を出す傾向にあります。さらに,元旦に届くためには暮れのうちに投函しなければならないのが現状のため,ますます形式的になっていく傾向です。その反面,グリーティングカードとしての意味合いが強くなり,親しい人やお世話になる人,あるいは旧知の人などに近況報告や抱負を語り,無事を確認し合うという新しい楽しみが加わってきたのも事実。年に一度,交友関係を改めて確認するためにも,年賀状は楽しんで書くようにしたいものです。
   書き方は,はじめに新年を祝う言葉であるで「賀正」や「謹賀新年」など,次に「旧年中はお世話になり・・・」と,旧年中の交誼に対する感謝を述べます。そして,新しい年の親交を願って「今年もよろしく・・・」といった言葉が続き,最後に先方の幸せを祈る言葉でしめくくります。相手によっては近況報告や家族の状況,今年の抱負などを盛り込み,書き方や言葉使いにその人らしさが感じられるような年賀状になれば,より一層心がふれあう内容になるでしょう。
●印刷の場合も,手書きの一筆を添える心遣いを
   とくに避けるべきことは,夫の公的な立場の賀状に妻が自分の名前を記して出すこと。こうした公私混同のあいさつは逆効果になるだけです。また,自分と相手の関係にも注意を。目上の方に対しては,年頭のあいさつにふさわしく威儀を正す必要があるでしょうし,親しい間柄なら親近感のあふれる内容にしたいものです。
   本来ならば,一人ひとりに心を込めて書くべきですが,数が多い場合には印刷するのも現在の傾向です。ただし,この場合には,決まり文句だけを印刷し,余白にひと言でも自筆でメッセージを添えるような工夫と心遣いを。
 
前年に不幸があった場合の年頭のあいさつ
   前年に家族を亡くした場合には,その家に新しい年神が宿らないとされているため,正月飾りやお供えも不要。表向きには「おめでとう」という祝いの言葉を避けるのがしきたりですので,年賀状も出す必要はありません。一般的には,十二月中旬までに年賀欠礼のお詫びのあいさつ状を出すようにします。文面には,誰がいつ亡くなったかを簡単に記し,年始のあいさつを控える旨を記します。また,年賀欠礼のあいさつ状の代わりに,あるいは年賀状をいただいた方に,松の内が過ぎてから寒中見舞いとしてあいさつ状を出してもいいでしょう。

−年始まわりに伺う範囲は?
●お世話になっている方に暮れのうちに予約を
   隣り近所にも年始のあいさつに伺っていた以前と違って,近ごろでは年始まわりは親の家や仲人宅,上司宅,恩師の家などと特別にお世話になっている方に限られるようになっています。
   これは,お正月の休みを家族水いらずで過ごしたり,族行をするようになってきたためと思われます。年始客のもてなしに明け暮れていては,勤労者世帯ではせっかくの休みもゆっくり過ごせないでしょうし,とくに,都会生活者の間では,予告なしの訪問客は必ずしも歓迎できる状態でなくなってきたからでしょう。こうしたことも考慮し,そのうえで年始のあいさつに伺いたいと思うお宅があれば,暮のうちに都合をたずね,予約しておくのが最近のマナーだと言えます。
   年賀の品は,ごく簡単なもので十分ですが,もし,お歳暮を贈っていない場合には,それに準じた品にのし紙をかけて,表書きは「御年賀」とします。
   先方が留守の場合には,名刺かメモを郵便受けなどに置いておきます。できるだけ避けるべきですが,予告なしに伺ったときは,玄関先のあいさつのみで失礼するようにしましょう。

−年始まわりの服装のマナーは?
●何を着るかよりどの程度の格式に調えるかが問題
   上司や恩師,仕事上お世話になっている方など,公的な関係の方たちへ年始のあいさつに伺うときは,改まった服装に調えるべきです。
   かつては,モーニングや紋服などの正装をしたものですが,現在では略礼装がふさわしいと思われます。個人的な年始のあいさつなら,男性はダークスーツ,女性はドレッシーな雰囲気のワンピースやスーツ,和服なら小紋程度でいいでしょう。
   実家や友だちのお宅へ伺う場合には,親密さを表す意味もあるので,もう少しリラックスした装いでもいいでしょう。お正月らしく華やかでたのしい装いを心がけたいものです。
   なお,同行する家族などが同じレベル,雰囲気の格式に揃え,バランスを取ることも大切。たとえば,訪問着の女性に着流しの男性や,子供はベルベットのワンピースなのに親がセーターにジーパンでは不釣り合いです。
   服装に決まりはありませんが,こういったポイントは必ず押さえておくようにしたいもの。何を着るかということよりも,どの程度の格式がふさわしいかを心がけて服装選びをするようにしましょう。