−媒酌人夫妻の役割と心得は?
●当日は早めに式場へ
式場へは三十分か四十分前に着くようにしましょう。式場に着いたら夫妻そろって双方の控室に行き,お祝いと今日の役目を務める旨,あいさつします。そのあとは媒酌人は新郎側,夫人は新婦側の控室で待機します。この間に式や披露宴の段取りを確認し,よく把握しておきましよう。
なお,夫人の着付けは,新郎新婦によけいな気づかいをさせないよう,できれば式場外の美容室でして行きたいもの。式場内の美容室を利用するときは,自分で直接予約を入れ,支払いも媒酌人がする旨を伝えておくこと。支払いの折には気持ち程度のご祝儀を渡しましょう。
●媒酌人夫人は花嫁の介添え役も
当日の新婦の世話は式場の介添え人がしますが,媒酌人夫人も新婦の介添え役。新婦の様子にたえず気を配り,緊張をほぐすように心がけます。
また,教会そのもので式を行うときは,実際の介添え役を務めなければなりません。美容師にベールの持ち方,手袋やブーケの預かり方,渡し方などをよく聞いておきます。
●招待客に対しては招待者側の一員として接する
この日の媒酌人夫妻は,新郎新婦や身内に対しては第三者としてお祝いを述べる立場ですが,招待客や式場関係者へは招待者側の一員として接します。招待客が見えられる時間が近づいたら控室に出向いてあいさつをし,くつろいでいただくようにもてなしをします。
●あいさつでの二人の紹介は平等に
披露宴で行うあいさつには,十分準備をして臨みたいもの。招待客の顔ぶれやどんな披露宴にしたいか二人の希望に合わせ,格調を高めるのがいいか,平易な語りロで親密感を出すのがいいかなど考えます。また,心のこもったあいさつをするためには,二人のことをよく知ることが必要です。二人に経歴や知りあったいきさつ,新生活の抱負など,必要な事柄を本人自身に確かめておきましよう。
あいさつは,初めに祝いの言葉,そして自己紹介をし,二人が結婚の誓いを交わしたことを報告します。続いてふたりの経歴,人柄などを紹介し,二人への期待,二人に代わっての招待客へのお願いを述べ,祝いの言葉で締めくくります。これを五間程度で話します。
あいさつの中では,新郎新婦のうち自分が親しいほうに肩入れしすぎたり,親や会社の話ばかりに力が入らないようにすること。また,ポイントをメモして持っていると失敗がありません。名前や勤務先などの固有名詞を読み間違えないようふりがなをふっておきます。
−司会者の心得とマナーは?
●スムーズな進行は綿密な打ち合わせから
司会を依頼されたら,まず新郎新婦との綿密な打ち合わせから始めましょう。どんな感じの披露宴にしたいのかをよく聞いたうえで,進行・演出を考えます。招待客の人数や顔ぶれを考慮し,格調高く,オーソドックスな宴がいいのか,打ち解けたほうがいいのか基本方針を決め,それに合わせて大筋のプログラムを組みます。なお会場の広さや設備,サービスの内容なども,事前に下見をして確認しておきます。
●タイムテーブルと口上のシナリオを作る
プログラムを組んだら,細かい時間の目安を決めたタイムテーブルを作成します。式場側の料理の出具合などと組み合わせ,スピーチや余興の入れ方を考え,それと合わせて,司会者自身の口上を書いたシナリオも作っておきましょう。新郎新婦が色直しで不在中にスピーチや余興をお願いするのは避けるべきです。もしこの間に何かしたければ,招待者側のもてなしの意味での余興か,二人の生い立ちを紹介するスライドなどでしょう。なお,媒酌人をはじめ,スピーチをお願いする方の姓名と肩書,本人たちとの関係を正しくメモし,固有名詞にはふりがなをつけておきます。
披露宴を盛り上げるための司会術
◆セリフに新郎新婦のエピソードを盛り込む
司会者のセリフは,ある程度決まっているものですが,新郎新婦のちょっとしたエピソードなどをはさむと内容に厚みが生まれ,たのしい司会になります。新郎新婦の人柄や趣味,二人が知り合ったきっかけ,交際中のエピソードなどを盛り込みます。また,媒酌人やスピーチなどを依頼した人と新郎新婦との間柄を確認しておくほか,新郎新婦の衣装や会場の特色,料理の内容なども司会のための材料に。事前に情報収集をきちんとしておけば,それだけ余裕も生まれるものです。ただし,あまり立ち入らないよう一線を引く配慮も忘れずに。
◆招待客の席次をチェックしておく
祝辞や余興を頼んでいる人の席はあらかじめ確認し,席次表に印をつけておきます。中座しているときに名前を呼ばないようにしましょう。
◆スピーチにつかえた人には助け舟を
スピーチの途中でつかえてしまった人には,さりげなく助け舟を出しましょう。たとえば「ご親友の幸せいっぱいの姿に感無量のご様子ですね。そのお気持ちがお二人への何よりのメッセージです」などとつなぎます。
◆はしゃぎすぎは禁物
明るく盛り上げようとするあまり,はしゃぎすぎないように。また,宴の雰囲気に引き込まれて言葉や態度が雑にならないように気をつけて。最後まで,冷静に節度ある対応を心がけます。
●服装は清潔感あふれるものを
司会者の服装は,基本的には招待客のものと同様ですが,人の注目を浴びやすい役割ですから,どちらかというとベーシックで控えめなものを選んだほうがいいでしょう。男性なら黒の上下やダークスーツ,夜なら黒か紺のタキシードなど。女性の場合はシンプルなアフタヌーンドレスかカクテルドレスで,やはり色や柄は抑えめにします。
●当日は早めに式場に出向き,再度確認を
当日は挙式一時間前くらいには式場に行きましょう。まず控室の新郎新婦,媒酌人,双方の親族などにあいさつをし,列席者の変更の有無などを確認します。会場責任者との打ち合わせ,祝電の整理も行います。
招待客が集まっていらしたら,スピーチなどをお願いする方にあいさつをし,およその時間と順番を知らせ,肩書や紹介の仕方を確認します。このとき,まず自分が司会を務める旨を自己紹介するとともに,本人二人が腰かけたままお話をいただくことのお許しを得ておくことが大切なマナーです。
●主催者側の立場に立って敬語を使い分ける
招待客に対しては尊敬語,招待者側に対しては謙譲語を使います。自分が招待者側の立場であることを忘れなければ,自然と使い分けられるでしょう。また「…です」「…ます」と,語尾をはっきり発音することが大切です。
−こんなとき司会者はどうする?
◆祝辞予定者が中座している場合
祝辞を予定している方が中座しているときは,順番を入れ替えるなどして対処します。
開宴時から席があいていたり,あらかじめ遅れる旨の連絡があった場合は,「ここで○○様よりご祝辞をいただく予定でございましたが,交通渋滞のためまだご到着になっておられません。ご到着次第ご祝辞をいただくことにしまして,先に進めさせていただきます」と断ってから進行させます。当人が到着したら,きりのいいところで「ただいま○○様がご到着されましたので,さっそく祝辞をいただきたいと思います」という具合に,祝辞をお願いします。
◆時間が足りなくなった場合
祝辞が長くなるなどして,時間が足りなくなりそうなときは,「まことに勝手なお願いで恐縮ですが,これからのご祝辞はお一人さま二分程度でお願いいたします」というように断りを入れてお願いします。また,友人などをまとめて紹介し,一人一人でなく何人か続けてリレースピーチにするなどします。
◆時間が余った場合
どなたかに余興などのピンチヒッターをお願いします。このような場合に備えて,あらかじめ新郎新婦と相談してリストを作っておくと安心です。あるいは,司会者が招待客の方々にお祝いのインタビューをして回ったり,余興のアンコールを頼むのもいいでしょう。