−結納当日の費用は?
●共通の費用は双方が折半するのが原則
かつては男性が嫁をもらうという形式がふつうだったため,男性が費用の多くを負担するのが一般的でした。逆に結納を贈られる女性側は飲食代をすべて負担するなど,そのしきたりや習慣は地方や家によってさまざまだったようです。しかしながら,現代では,婚約は本人二人の責任ですので,結納当日に必要な費用は等しく負担し合うのが原則。費用の総額を折半するか,人数分出し合うのがポピュラーな方法です。会場費や飲食代だけでなく,仲人や立ち会い人などの第三者へ贈るお車代やお礼も,同様に共通の費用と解釈すべきでしょう。
ただし,一方の都合でどちらかが遠方から交通費と時間をかけて相手側へ出向く場合があります。こういった場合には,迎える側が遠方から出向いてもらったお礼も兼ねて会場費や飲食費を負担するのが心遣いではないでしょうか。一方の自宅で結納を行うときも,出迎える側がその労をねぎらいもてなすのがマナー。一つひとつをお金で折半するのではなく,お互いに自分のこととして負担し合うのが自然だと言えるでしょう。
ちなみに,相手に贈る結納品や記念品の購入費は,当然のことながらお互いが自分で負担します。
結納品はいつまで飾るのか?
婚約期間が長期になる場合,結納の目録や結納飾りをどのようにすべきか悩むことがあります。
本来,結納品は床の間やサイドボードの上などの上座に,挙式の当日まで飾っておくのがしきたりです。しかし,三か月や半年にも及ぶと当然汚れてしまうこともあり,変質してしまう品物もあるでしょう。結納は心を込めて贈られた記念の品物です。祝い客の目に留まることも多いだけに,こういった状態はできるだけ避けるようにしたいものです。
しきたり通りの内容の品が贈られた場合は,酒肴となる鰹ぶしやするめ,昆布などが含まれていることが多いはずです。このような食べられる品は,一〜ニ週間飾っておいたあと,変質する前に食べてしまっても問題ありません。変質しないものも,結納後一〜ニ週間飾っておいてから一旦片付けておく方法があります。挙式が近づいて,招待状を発送するころにもう一度飾り直せば汚れることもないでしょう。もともと酒肴として贈られている鰹ぶしやするめは,飾り直すときに新しい品と取り替えてかまいません。
挙式の日まで飾った結納は,神仏用品と同じように焼却するなどして処分します。もちろん,記念にとっておくのも一つですし,目録だけ保存しておくのも本人の気持ち次第です。このほか,荷物送りの日や式当日に男性側に持参するしきたりや男性への贈り物に使う習慣もあるので,男性側の希望や習慣を確認しましょう。
−結納時の仲人の役割と心得は?
●結納時の仲人は挙式の媒酌人を兼ねることも
かつて,仲人は双方の家の全権委任大使であり,「新夫婦の後見人」でもありました。しかし,結婚が本人二人の意思と責任によるものとなった現代では,その必要性はなくなりました。このため,仲人の機能そのものも変化しました。
従来の考え方では,仲人の果たす役割は大きく三つに分けることができました。第一に縁談からお見合いまでの紹介人的な役割を果たす仲人,第二には婚約から結婚準備までを立ち会う仲人,第三は挙式当日の媒酌と介添え役,つまり媒酌人を務める仲人です。
これらの役割を一組もしくは二組の仲人が通して担ったものです。しかし,お見合いよりも恋愛が増え,仲介の機能も変化しているいま,婚約の儀式である結納は仲介なしもあり,その立ち会い人だけを頼まれるケースは少ないでしょう。結納時の仲人役は,お見合いの折りの紹介者や挙式の媒酌人に依頼されることが多いようです。とくに,挙式当日の頼まれ仲人が親と面識のない場合は,結納時に立ち会って顔を合わせるケースも増えてきています。婚約に立ち会う仲人の役割は二人の婚約の証人になることと心得ましょう。
●若い二人の希望に添って結婚までバックアップを
仲人の依頼を受けた場合は,自分が果たすべき役割はどの範囲か本人に確認するようにします。もし,本当は挙式の媒酌人まで依頼されているのに結納時だけの仲人と解釈していた場合,自分たちだけでなくこれから結婚する二人とその家族にも迷惑をかけることになりかねません。入念に打ち合わせをしておくことを忘れないようにしましよう。
また,どのような形の婚約になるのかも確認事項の一つです。結納ではなく婚約パーティや婚約式という形を本人たちが望んでいる場合もあります。しきたりどおり結納をするにしても,贈るのか交換するのか,仲人の手で取り交わすのか立ち会うだけなのかなど,その方法はさまざまです。こういったことも踏まえ,本人たちの意向をよく聞いておくようにしましょう。現代では,あくまで本人同士が決めたことを尊重するのが原則。仲人として若い二人の新しい人生のスタートをバックアップし,協力するようにしたいものです。仲人を依頼されるということは,一組の夫婦として社会的に信用を得ているという証拠です。祝いごとですので,一旦引き受けたら決して断ることのないようにするのが目上の者としての常識です。そして,結婚する二人の良き理解者,もしくは相談相手としての機能も併せもつことを心得ておきましょう。