慶事のマナー

−結婚記念日の祝い方は?
●家族の創立記念日として意味のあるお祝いを
   結婚記念日は,西欧社会から入ってきた習慣ですが,日本でもようやく定着してきた感があります。結婚記念日は夫婦にはもちろんのこと,家庭にとっても創立記念日に匹敵するもの。大きな節目にあたる結婚二十五年目の銀婚式や五十年目の金婚式には,とくに盛大に祝いたいものです。
   欧米では,結婚一年目の紙婚から最後の七十五年目のダイヤモンド婚まで,ほぼ一年ごとに名称がつけられています。国や州によって違いはありますが,共通するのは年ごとにより硬く,高価なものに名称が変わっていくことでしょう。これは,夫婦の絆の強さを象徴していると言えます。ですから,名称にとらわれるよりも,その精神を大切にお祝いしましょう。
   祝い方は,五年,十年,二十年の大きな節目になる年以外は,夫婦で名称にちなんだ記念品を交換したり,お祝いの会食をするのが主流です。もちろん,子供がいる家庭なら,家族揃って会食してもいいでしょう。このほか,記念品の交換の代わりに家の家具や電化製品,調度品などを買い調えていくというのも意味ある祝い方。必要な実用品から,年を追うごとに高級な家具になったり,いずれは美術品などに育っていけば,家庭の歴史を物語るかけがえのない記念となるのではないでしょうか。また,親など親しい方たちには,今年も無事記念日を迎えられた旨を報告するあいさつ状を送る程度で良いでしょう。
   十年目や二十年目,そして銀婚式や金婚式などの大きな節目を迎えたら,お世話になった方たちを招いてパーティを。欧米の習慣を取り入れて,かつての結婚式を再現し,ウエディングケーキに入刀したり,祝辞や謝辞を行うのもいいかもしれません。ちなみに,銀婚式には銀とグリーンで彩り,金婚式には金と赤で飾りつけるしきたりもあります。ただし,実際には金婚式ともなると本人たちが用意できると限らない場合も。周囲も同様に,年を取りすぎることもあるので,三十年や三十五年目くらいに関係者を招待し感謝の会にしてもいいでしょう。

−長寿の祝い方は?
●お祝いは本人の健康状態と生活環境に合わせて
   満六十歳に迎える還暦に始まり,数えで七十歳の古稀や七十七歳の喜寿,八十八歳の米寿,そして九十九歳の白寿などが,おもな長寿のお祝いです。これに加え,八十歳の傘寿と九十歳の卒寿にもお祝いをします。百歳がめずらしくなくなったいまでは,一世紀にわたることから紀寿,中国の文献からとった大斎など,呼び名は固定していませんが,この年にもお祝いを行います。
   長寿のお祝いと言っても,暦が一巡した還暦は,長寿時代の現代では,まだまだ現役。第一線を退く時期とはいえ,そろそろゆとりのある暮らしになるころでしょう。かつてのしきたりのように,赤いちゃんちゃんこを着るには早い年齢です。人生の一区切り,仕上げどきという意味で,これからの抱負や生き方を周囲の人たちに表明する行事にしてもいいのではないでしょうか。もちろん,周囲にはこだわらず,家族での食事の席などで話す程度でもかまいません。忙しい人なら,親しい方たちにあいさつ状を出すだけで十分です。
   お祝いを贈られたり,会を催す場合は,干支にちなんだペーパーウエイトや箸置き,杯,版画などの記念品を贈るといいでしょう。いただいた品の半額を返すなどと考える必要はありません。
   古稀や喜寿を迎えるころになると,そろそろ現役を引退し,次代に席を譲る時期にさしかかっているはず。親しい方やお世話になった方に,自分の力で感謝の気持ちを伝える最後のチャンスになるかもしれません。できれば,いろんな方に集まっていただき,これまでの親交や協力に対する感謝の会を催すのも意味のある祝い方です。
   傘寿以降は,周囲の人たちが長寿を賛え,本人は祝ってもらう立場になるのがふさわしいでしょう。元気なら自分であいさつし,記念に色紙などを書いて配る方法もあります。こういった内祝いや記念品は,その人の人柄があらわれるようなもの,例えば,酒器や茶器,額や写真立てなどがよく選ばれるようです。
   いずれにしろ,当然,年齢による体力や気力には個人差があります。祝い方は本人の健康状態や生活環境に合わせ,本人の誕生日やその年の初めのころに行うべきでしょう。